第2回 冬の漢方

 寒くなると血圧が上がり、肩が凝って、皮膚も乾燥してきます。腰痛などの筋肉の痛みも悪化します。これらには血流や血管が関係しており、漢方では血(けつ)の障害だと考えられてきました。桂枝茯苓丸や当帰芍薬散など、血(けつ)に作用して改善する漢方薬が数多くあります。

もともと漢方薬には、血圧・血糖値などの「数値」を治すという意識はありませんが、肩こり・腰痛などの「症状」に対応するように作られています。しっかり飲んでいくことで、ご自身の弱点が修正されていきます。血(けつ)の一症状である「こむらがえり」も、おきにくい身体にしていくことができます。

また冬は風邪の季節ですが、多くの人がマスクをはずし始めたこともあって、インフルエンザの流行も早まりました。「風邪薬をずっと飲んでいるのになかなか治らない」という声を時々聞きますが、総合感冒薬の下熱作用が足を引っ張っている場合があります。

2000年前の傷寒論には、(風邪ウイルスを追い出すために)積極的に身体を温めたらよいと書かれています。熱に弱いウイルスはたくさんあり、暖かくしている方が身体の防御反応も高まるので、「風邪」をひきにくく治りやすくなります。葛根湯などの漢方薬は身体を温めて治癒力を高めてくれますので、上手に使って冬の寒さを乗り切ってください。

参考文献

萬谷直樹:痛みに対する漢方療法. 高崎医学54;21-23, 2003